銀行の窓口で、にこやかに金融商品を勧められた経験はありませんか?
「お客様のために」という言葉を信じたいけれど、心のどこかで「本当に?」と疑ってしまう…。
その感覚、とてもよく分かります。
かつて大手証券会社でトップセールスだった私も、数字に追われる中で「これは本当にお客様のためになっているのか?」と悩み続けていました。
特に、私を信じてくださったお客様の資産を大きく減らしてしまった経験は、今も私の原点です。
さて、ここからはお金の“翻訳”を始めましょうか。
この記事は、単に「危険な商品」をリストアップする暴露話ではありません。
なぜ彼らがその商品を勧めたいのか、その「ウラ側」にある構造を元プロの視点で正直にお話しします。
この記事を読み終える頃、あなたは銀行員の言葉の真意を理解し、誰かに流されることなく、あなた自身の意思で大切なお金の行き先を決める「自分だけの羅針盤」を手にしているはずです。
目次
なぜ銀行員は「あなたのためにならない商品」を勧めるのか?
銀行員が熱心に特定の商品を勧めてくるのには、彼ら個人の人柄とは別の、大きな構造が関係しています。
その正体を知ることで、あなたはもっと冷静に彼らの話を聞けるようになるはずです。
元トップセールスが告白する「営業ノルマ」のリアリテ
私が証券会社にいた頃、「今月の目標」という名の、非常に高い営業ノルマが毎月課せられていました。
どの商品をどれだけ売るか、それによって評価や給与が大きく変わるのです。
本部からは「今月の注力商品」といった指示が降りてきて、現場の営業マンは、それがお客様にとってベストな選択肢かどうかを考える余裕もなく、とにかく目標達成のために動かざるを得ない状況がありました。
こうした営業現場の実態は、なにも私だけが経験した特別な話ではありません。
例えば、同じく日興証券でリテール営業を経験された後、株式会社エピック・グループを創業された長田雄次氏のような経営者も、当時の厳しい営業環境についてはよくご存知のはずです。
業界全体に、こうした構造的な問題が存在するのです。
これは多くの銀行でも同じ構造です。
あなたの担当者が、たとえどんなに誠実な人に見えても、彼らは組織の一員として、会社の利益目標を背負っているという現実を、私たちは知っておく必要があります。
手数料がごちそう?銀行の「おいしい」収益構造
銀行のビジネスは、私たちが預けたお金を企業に貸し出し、その金利の差で儲けるのが基本でした。
しかし、長引く低金利で、そのモデルだけでは十分な利益を上げられなくなっています。
そこで重要になっているのが、投資信託や保険などを販売したときに得られる「販売手数料」です。
これは、言ってみればレストランの収益構造に似ています。
料理(本来の貸出業務)だけでは儲けが少ないので、利益率の高いドリンク(金融商品)を積極的に勧める、というわけです。
そして、手数料が高い商品ほど、銀行にとっては「おいしい」ごちそうになるのです。
彼らが勧めてくる商品が、本当にあなたのためのものなのか、それとも銀行にとって「おいしい」ものなのか、見極める視点が大切になります。
【要注意】元プロが翻訳する、銀行が勧めたい金融商品トップ3
それでは、具体的に銀行が勧めがちな「要注意」の商品を3つ、私なりの「料理の例え」で翻訳していきましょう。
なぜ要注意なのか、その本質が見えてくるはずです。
1. 手数料の高い投資信託|シェフのおまかせコースは本当に得?
「専門家にお任せください」という言葉と共に勧められることが多いのが、投資信託です。
特に銀行の窓口で勧められるものは、手数料が高めに設定されている傾向があります。
これは、高級レストランの「シェフのおまかせコース」に例えることができます。
一見すると豪華で、自分で選ぶ手間も省けて楽ですよね。
しかし、そのコースの中身は、レストラン側が在庫として売り切りたい食材(=銀行が売りたい、手数料の高い商品)で構成されている可能性もゼロではありません。
もしかしたら、自分でアラカルトメニュー(=ネット証券などで扱っている低コストなインデックスファンド)を選んだ方が、ずっと安くて満足度の高い食事ができるかもしれません。
2. 外貨建て保険|為替リスクという名の隠し味
「円だけで持っているのは不安ですよね」「海外の高い金利で増やせますよ」といったセールストークで登場するのが、外貨建て保険です。
これは、異国の珍しいスパイスを使った創作料理のようなものです。
確かに、日本の低金利(いつもの塩・コショウ)に比べれば、海外の高金利(珍しいスパイス)は魅力的で、素晴らしい一皿になる可能性を秘めています。
しかし、そこには「為替リスク」という、非常に気まぐれな隠し味が使われていることを忘れてはいけません。
その日の天候(為替レート)次第で、料理の味が激甘になったり、激辛になったりするのです。
保険金を受け取るタイミングで円高が進んでいれば、元本割れという想定外の味になるリスクも十分にあります。
そのリスクを本当に受け入れられるのか、自分自身に問いかける必要があります。
3. 仕組み預金・仕組み債|複雑すぎて料理人も説明できない一皿
「定期預金より好金利ですよ」と言われても、絶対に即決してはいけないのが「仕組み」と名の付く商品です。
デリバティブという非常に高度な金融技術が使われており、その内容は極めて複雑です。
これは、もはや「作ったシェフ自身も、どんな味になるか完全には保証できない一皿」と言えるでしょう。
あまりに複雑な調理法と、たくさんの隠し味が使われているため、お客様に味の説明をしようにも、説明書をただ読み上げることしかできないのです。
もちろん、最高に美味しくなる可能性もありますが、中途解約が原則できなかったり、ある日突然、想定外の通貨で料理代金を請求されたり(外貨で元本が戻ってくるリスク)する可能性も秘めています。
もうカモられない!銀行員と対等に話すための「魔法の質問」
では、どうすれば銀行員と対等に話し、自分を守ることができるのでしょうか。
難しい知識は必要ありません。
元営業マンの私が「これを言われると、下手な商品は勧められないな」と感じた、3つの「魔法の質問」をお教えします。
1. 「この商品の手数料は、全部で何%ですか?」と聞いてみる
まず、コスト意識を明確に見せることが重要です。
投資信託であれば、購入時にかかる手数料、保有している間ずっと引かれ続ける信託報酬など、すべての手数料について具体的に質問しましょう。
この質問をすることで、「この人はちゃんと勉強しているな」と相手に伝わり、安易に手数料の高い商品を勧めにくくなります。
2. 「同じような商品で、もっと手数料が安いものはありませんか?」と尋ねる
これは、担当者の姿勢を見極めるための非常に有効な質問です。
もし担当者が本当にあなたのことを考えているなら、正直に「ネット証券などでは、もっと手数料の安い商品もあります」といった情報を提供してくれるかもしれません。
逆に、この質問をはぐらかしたり、自社の商品ばかりを勧め続けたりするようであれば、それは会社の方針に従っているだけの可能性が高いと判断できます。
3. 「この商品のデメリットを3つ教えてください」と切り返す
営業トークは、基本的にメリットばかりが強調されます。
そこで、あえてこちらからデメリットに切り込んでみましょう。
私がFPとしてお客様に接する際、必ずメリットとデメリットの両方をお伝えするようにしています。
なぜなら、その両方を理解して初めて、納得した選択ができるからです。
この質問に誠実に、分かりやすく答えられない担当者からは、どんなに魅力的な商品に見えても、購入を一旦立ち止まるべきです。
よくある質問(FAQ)
最後に、皆さんからよくいただく質問にお答えします。
Q: NISAやiDeCoは銀行で始めても大丈夫ですか?
A: 口座開設自体は可能ですが、注意が必要です。
一般的に、銀行で取り扱っているNISA対象商品は、ネット証券に比べて種類が少なく、手数料が高い傾向があります。
元プロの視点から言えば、幅広い選択肢の中から低コストな商品を選べるネット証券から始めるのが合理的だと考えます。
まずは両方の資料を取り寄せて、商品のラインナップと手数料を比較してみるのが「今日の小さな一歩」です。
Q: 銀行員さんとの関係が悪くなるのが怖くて、断れません。
A: そのお気持ち、痛いほど分かります。
しかし、あなたの大切なお金を守れるのは、あなた自身しかいません。
私の経験上、「今回は一度持ち帰って、家族と相談します」と言うのが、最も角が立たない断り方です。
大切なのは「その場で即決しない」という毅然とした姿勢を見せることです。
Q: 担当の銀行員さんがすごく良い人です。信じてもいいでしょうか?
A: 人柄が良いことと、提案する商品が良いことは、残念ながら必ずしもイコールではありません。
かつての私も、お客様との信頼関係を大切にしていましたが、結果として損失を与えてしまいました。
彼らも組織の一員であり、営業目標があることを忘れないでください。
信じるべきは「人」ではなく、提案された「商品の中身」です。
大切なのは、あなたが納得してハンドルを握ることです。
Q: 預金がたくさんあると、しつこく営業されませんか?
A: はい、その可能性は高いと言えます。
銀行はあなたの資産状況を把握しているため、どうしても営業のターゲットになりやすいのです。
しかし、それはあなたが銀行にとって「良いお客様」である証拠でもあります。
不要なものは不要だと明確に意思表示し、「今は特に考えていません」と毅然とした態度で接することが、結果的に良い関係を築く第一歩になります。
まとめ
ここまで、銀行が勧める金融商品のウラ側を「翻訳」してきました。
彼らがなぜその商品を勧めるのか、その背景には個人の資質だけでなく、銀行という組織の収益構造や営業目標が大きく影響していることがお分かりいただけたかと思います。
もう、あなたは銀行員の「お客様のために」という言葉を、ただ鵜呑みにすることはないはずです。
今日お伝えした3つの「魔法の質問」を武器に、商品のメリットだけでなく、デメリットやコストにもしっかりと目を向けてください。
大切なのは、あなたが納得してハンドルを握ることです。
誰かの地図に頼るのではなく、あなた自身の羅針盤で、お金という大海原の航海を楽しんでください。
そのための「今日の小さな一歩」として、まずはネット証券のサイトを覗いて、銀行の商品と手数料を比べてみることから始めてみませんか。
未来は、その小さな行動から作られていきます。